研究紹介



■研究教育概要■
  私たちの研究グループは、3つのサブグループから構成されており、個別のテーマに取り組んでいます。 共通するのは遺伝子機能動態の可視化技術を駆使することです。 遺伝子の発現や機能を調べる手法の一つとして、ホタルの発光遺伝子(レポーター遺伝子)を導入した形質転換植物を利用し、 生きたまま植物の遺伝子発現量を定量する独自のシステムを確立しています。 これまでに、植物の病害抵抗性に関連する遺伝子発現を連続観察可能なシステムを構築し、 それを利用して病害耐性植物の作成や、抵抗性誘導薬剤探索に役立つ系が出来ています。 これにより環境負荷の低い植物病害防除方法の開発につなげたいと考えています。 また、植物のDNA損傷応答性遺伝子について詳しく調べ、上記のシステムを利用して、 化学物質や有害紫外線などによるDNA損傷を検出可能な形質転換植物を作出しています。 さらに、植物を利用した高付加価値物質生産を目的とした 高効率な遺伝子発現システムの構築に関する研究でも成果をあげています。
本研究室は、教員1名、博士研究員1名、研究補助員4名、博士課程院生4名(社会人3名)、修士課程院生8名、学部生5名で構成され、研究教育課題に取り組んでいます。 教育面では、対外発表の機会を多く与え、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルの向上に配慮しています。 定期的な少人数グループ別ミーティングを開催し、英語力の向上にも配慮しています。

(1)低環境負荷植物保護技術と創薬
植物が本来もっている病害抵抗性のメカニズムを理解し、計画的に引き出すことによって環境負荷が低い植物保護手法を創製する。
右図は病害応答センサーと発光遺伝子を導入した形質転換タバコで、 病害刺激を受けた部分が発光します。
この様な遺伝子の働きを可視化する手法を用いて、 植物の病害に対する応答性に関するリアルタイム情報を得ることが可能です。
これを利用して、病害応答に関係する遺伝子・タンパク質の働きを調べることが出来ます。
このような実験系を使って、病害抵抗性を向上させる新機能遺伝子の探索や、 抵抗性誘導剤(植物アクチベーター)の探索に関する研究等を行っています。
 >>関連情報
・平塚和之ほか,微生物の病原性と植物の防御応答,上田一郎編,北海道大学出版会,2007
・鳴坂義弘,平塚和之,能年義輝,プラントアクティベーターによる植物免疫の活性化と化学遺伝学への利用化学と生物(日本農芸化学会編)48, 706-712
・特願2011-181436「植物用抵抗性誘導剤」発明者:井上誠一,本田清,平塚和之 出願日:平成23年08月23日
・特願2011-274486「植物抵抗性誘導剤、植物の抵抗性誘導方法、及び植物病害の予防方法」発明者:平塚和之,尾形信一,小倉里江子,草間勝浩,原裕芽子,牧野美保,梶翔太 出願日:平成23年12月15日


(2)多重遺伝子発現と高効率遺伝子発現制御
社会的受容性が高く、効率の良い外来遺伝子発現方法を研究開発する。植物による有用物質生産手法の開発(植物工場)。
 >>関連情報
 「外来遺伝子発現要素およびその利用」特願2010?033763 発明者:平塚和之、稲本敦、小倉里江子 出願日:平成22年02月18日
・松尾直子・橋本千種・市橋茜・平塚和之 (2004) ウイルス由来配列を利用した多重遺伝子発現系に関する研究,ウイルス病研究会レポート,7, 63-72.
・「キャップ非依存性RNA翻訳効率制御要素およびその利用」特願2004-241216、発明者;平塚和之、松尾直子、新名惇彦、諸橋賢吾

上図はInternal Ribosome Entry Site (IRES)と呼ばれる配列を挿入することで、真核細胞においてもポリシストロニックな翻訳が可能になることを示した図です。私たちは高等植物でこの系が 働くことを示し、新規な高性能介在配列の創出にも成功しています。さらに、このシステムを使って、効率の良い外来遺伝子発現に関与する因子の探索などにつ いても研究しています。高付加価値なタンパク質を生産させることを目的としています。


(3)生殖細胞形成と遺伝子組換え
生殖細胞形成と遺伝的組換えの制御機構を理解し、それらの仕組みを利用する。
 >>関連情報
・「高等植物のDNA損傷応答性遺伝子発現制御能を示すシス制御配列」特願2001-79524、特開2002-272469、 発明者:平塚和之、高瀬尚文、前田智秀
・「減数分裂細胞に特異的な植物プロモーター」・特願平11ー132706 公開日;平成12年11月21日 登録日:平成13年6月22日 登録番号3200627 発明者:平塚和之、高瀬尚文、堀田康雄、皆見政好

生殖は遺伝的多様性の原動力であり、実用上の様々な問題と密接に関係します。また、その本質である、遺伝的組換えの制御機構を理解し、利用するこ とにより、広範囲な応用展開が期待できます。私たちは生殖細胞形成に関与する未知遺伝子の機能解析、遺伝子組換え・修復因子の発現制御解析などを行い、こ れまでに、生殖細胞で増殖するユリ潜在ウイルスの解析、DNA傷害を特異的に検出可能な環境バイオセンサーの開発などに成功しています。